~透side~
放課後になって、俺と叶恋はいつも通り池の前で、隣同士座って喋っていた。
いつも通りって言っても、こうやって二人で池にいるのは久しぶりなんだけど。
空にはもうすぐ夏だからか、大きな入道雲がプカプカ浮かんでいる。
俺達は離れていた時間が嘘のように、いやそんな時間を取り戻すかのように、楽しく会話していた。
「……ははっ、何その勘違い!」
「いや、だって泉田があんな言い方したから……!」
叶恋はずっと大笑いしている。
理由は、昼休み中庭で最後まで話せなかった、叶恋と離れている間、俺に起こっていたことを、全て話したからだ。
あの日、泉田に呼ばれて話し合ったこと。
泉田の言葉から、泉田は叶恋のことが好きだと思ったこと。
だから俺は邪魔者だと思って、叶恋に酷いことを言って離れようとしたこと。
でも、それから俺は母親を見ても何も思わなくなって、叶恋のことばかり考えるようになったこと。
事の全てを知った叶恋は、いきなり吹き出して「透って天然」なんて言いやがった。
叶恋も俺と離れている間のことを話してくれた。
そんな叶恋の話によると、泉田は叶恋を担任として心配したから俺にあんなことを言ったらしい。
あとで泉田が俺と話したことを言い謝ってきた時に、そう言っていたからそうだと思う、と叶恋は言っていた。
そして叶恋は泉田は相変わらず奥さんとラブラブだとも言った。
ということは、俺は一人で勘違いして一人で意味のないお節介を焼いていたという何とも恥ずかしいことをしていたってことになる。
だから、ずっと叶恋に笑われているのだ。