30差の片想い








 そんな俺を、周囲の奴らは不思議そうに見つめている。

 まあ、校舎を全力疾走する奴なんてあまりいないんだから、当たり前か。


 普段極力目立たないように過ごしているけれど、今だけは周りの目なんてお構いなしでいいよな?





 息が上がって、汗も出てきた頃、俺はある教室の前で立ち止まった。


「ハア……ハア……」


 そこは、1-3。

 つまり、叶恋の教室だ。



 無意識に来たのだが、我ながらいい判断だったと思う。


 だってコウタもここに来たはずだから。

 もしかしたら、叶恋の友達か何かが行き先を知っているかもしれないのだ。


 っていうか、叶恋まだいるかもしれないな……。

 やっぱり本人に会うのは気まずくて、そっと教室を覗く。



「……いないっぽいな」


 教室を一通り見渡して、ほっと胸を撫で下ろした。

 そして、俺は勢いよく教室のドアを開ける。


 正直、母さんのことでケリはついても、女は苦手だ……。

 俺がずっと女を嫌っていたせいだと思うけど。



 もちろん、今もクラス全員の視線が俺へと集まっている。

 まあ、男に見つめられるのも嫌だが。


 なんて思いながら、俺は髪を掻き上げる。

「なあ、櫻井叶恋ってどこ行ったか知らない?」