30差の片想い








「……じゃあ俺、櫻井さんに告ろっかなぁ」


 コウタは空を見つめながら、そう呟く。

 そして「なっ?」俺に視線を向けて来るが、俺は即座に逸らした。




「……好きにすれば?」


 俺には関係ないだろって思った。



 どうやらコウタはまだ、俺が叶恋のことを好きだって勘違いしているらしい。


 本当、いい加減にしてほしい。

 そんなこと、本当にないから。


 だからこそ、言った言葉だった。




「…………。」


 だけどコウタは黙ったまんま。


 まだ信じてねえのかよ……。



 はあ、とため息を吐くと、俺は呆れ気味に、

「だから、俺は叶恋のこと、本当になにも思ってなっ……」


 コウタのほうに視線をやるが、そこには、



「……って、行動早いな、おい」

 もう、誰もいなかった。






「……たく、なんなんだよ」


 俺はさっぱり食べる気力を失って、弁当をもう一度袋に閉まって、ゴロンと床に寝転がった。