考え込んで固まっている俺を、不思議そうにコウタが見つめる。
「……いや、別に」
俺は弁当を食べ始めた。
「ふぅーん、そか」
コウタはそう言うと、いつの間に食べ終わったのか、ハンバーガーの包み紙をくしゃっと丸めた。
「……櫻井さんのことが大っ好きなのは分かるけどさ、もうちょっと俺に気遣ってくれてもいいと思う」
「ああ、ごめん………って、は?」
そんなコウタの言葉は、手に持っている箸を落としてしまいそうなほど驚く内容だった。
もちろん俺は驚いて、隣にいるコウタの方を見る。
コウタは、じっと俺を見つめていた。
「なにが、は?だよ。しらばっくれんなって。さっきからずっと遠い世界行ってんじゃん」
「いや、確かに考え事してたけど……でも叶恋は関係な……」
「ほらぁー!今また叶恋って呼び捨てした!!」
コウタは俺を指差す。
俺は、黙り込んでしまった。
だって、コウタの予想は当たっていたから。
「……そうだよ。ずっと、叶恋のことを考えていたよ。でも、お前が思ってるようなことじゃねえからっ」
俺がそう否定すると、コウタは俺にぐっと顔を近づけて、
「……マジで?」
「マジで」
俺もじっとコウタを見つめた。
するとコウタは「はぁー」と大きなため息を吐いて、ゴロンと床に寝転がった。


