30差の片想い





 考え込んで固まっている俺を、不思議そうにコウタが見つめる。



「……いや、別に」


 俺は弁当を食べ始めた。



「ふぅーん、そか」

 コウタはそう言うと、いつの間に食べ終わったのか、ハンバーガーの包み紙をくしゃっと丸めた。


「……櫻井さんのことが大っ好きなのは分かるけどさ、もうちょっと俺に気遣ってくれてもいいと思う」


「ああ、ごめん………って、は?」


 そんなコウタの言葉は、手に持っている箸を落としてしまいそうなほど驚く内容だった。


 もちろん俺は驚いて、隣にいるコウタの方を見る。

 コウタは、じっと俺を見つめていた。


「なにが、は?だよ。しらばっくれんなって。さっきからずっと遠い世界行ってんじゃん」


「いや、確かに考え事してたけど……でも叶恋は関係な……」


「ほらぁー!今また叶恋って呼び捨てした!!」


 コウタは俺を指差す。

 俺は、黙り込んでしまった。


 だって、コウタの予想は当たっていたから。



「……そうだよ。ずっと、叶恋のことを考えていたよ。でも、お前が思ってるようなことじゃねえからっ」


 俺がそう否定すると、コウタは俺にぐっと顔を近づけて、

「……マジで?」


「マジで」


 俺もじっとコウタを見つめた。



 するとコウタは「はぁー」と大きなため息を吐いて、ゴロンと床に寝転がった。