母さんはどうやら浮かれていたようで、俺の存在に今やっと気付いたようだ。
「どうして出かけると思ったの?」
「いや、オシャレしてるから」
「ああ……」
母さんはそう言うと、少し考えた後、顔を赤らめた。
「ほら、今日は結婚記念日だから……ちょっとオシャレしているのよ」
……ああ、なるほど。
そういえば、今日って結婚記念日だったけな。
毎年俺が嫌っていた日だ。
だって結婚記念日の二人のイチャつきっぷりは、普段のイチャつきなんて比じゃないくらいだから。
だから、嫌いだった。
悲しかった。
だから今も、照れている母さんを見ると胸が……
「あ、れ?」
どうしてだ?
胸が、痛くない。
悲しく、ない。
「……?どうしたの、透」
「…いや、なんでもない。き、着替えてくる」
不思議そうに首を傾げる母さんを置いて、俺は部屋へと向かった。
どうしたらいいのか、また分からなくなった。
自分がどうなってしまったのか、また分からなくなった。
全部全部、分からなくなった。


