30差の片想い






 母さんはどうやら浮かれていたようで、俺の存在に今やっと気付いたようだ。


「どうして出かけると思ったの?」


「いや、オシャレしてるから」


「ああ……」

 母さんはそう言うと、少し考えた後、顔を赤らめた。


「ほら、今日は結婚記念日だから……ちょっとオシャレしているのよ」


 ……ああ、なるほど。

 そういえば、今日って結婚記念日だったけな。


 毎年俺が嫌っていた日だ。

 だって結婚記念日の二人のイチャつきっぷりは、普段のイチャつきなんて比じゃないくらいだから。


 だから、嫌いだった。

 悲しかった。



 だから今も、照れている母さんを見ると胸が……



「あ、れ?」



 どうしてだ?


 胸が、痛くない。

 悲しく、ない。



「……?どうしたの、透」


「…いや、なんでもない。き、着替えてくる」


 不思議そうに首を傾げる母さんを置いて、俺は部屋へと向かった。


 どうしたらいいのか、また分からなくなった。

 自分がどうなってしまったのか、また分からなくなった。

 全部全部、分からなくなった。