30差の片想い






「どんな感じって……」

 どんな感じも何も、今喧嘩中……ってか、きっともう一生会わないだろう。



「いやあ、それにしても可愛かったな、叶恋ちゃん」


「え………」


「あっ、焼いてる?大丈夫、俺は母さんオンリーだから」


 驚く俺をよそに、「なっ?」なんて言って父さんは熱い視線を母さんに向けた。

 母さんも口では「いやだぁ」なんて言っているけれど、満更でもなさそうだ。


 ったく、この親たちは……。



「……まあ、大事にしてやれよ、透」


「そうよぉ、女の子ってどんなに強がってる子でも、本当は弱いものなんだから。男の透が守ってあげなくちゃね」

 何を勘違いしているのか、二人にそう熱弁される。




 まあ、二人に言われなくても分かってるけど。


 叶恋は、明るくていつも笑っているけど、本当はとっても弱くて泣き虫だ。

 変な所で強がって、でも素直だし分かりやすい。


 人一倍誰かの気持ちを想えるけど、だからこそすぐ傷つくんだ。

 例え、自分のことじゃなくても。


 純粋で、一途で。

 そんな優しい叶恋だから、守ってやりたいって思ったんだ。


 ……だから、俺は叶恋から離れたんだ。

 叶恋のために。叶恋の恋のために。



「……でも、好きな奴に守ってもらえなきゃ、意味ないだろ」

 そう呟いて、ご飯を一口。