「あら、そう言うあなたもビール飲み過ぎじゃない?食べる前から飲んで」
「いいじゃないか、仕事終わりのビールは格別だぁ~♪」
「まあっ、もう酔ってる」
今日も、仲良さそうな二人の会話を聞きながら箸を進める。
チラッと視線を送れば、くっついちゃってるし。
「はぁ……」
また、ため息。
よくもまあ、子供の目の前でこんなことやれるよ。
なんて呆れる俺だが、最近はちょっと様子が可笑しい。
前まではイチャつく二人を見て呆れるのと同時に、胸を痛めていた。
悲しくて、切なくて、やり切れない気持ちでいっぱいだったのに。
今は、どうだろう。
すっぽりとそこだけくり抜かれたように、そんな悲しい気持ちを抱かない。
残っている、〝呆れ〟だけが唯一感じる感情だ。
それは、つい最近からだった。
母さんを見つめてみても、特に何も感じなくなった。
父さんに対する反抗も、一切と言っていいほどなくなった。
そう、二人に対して特に何も思わなくなってしまったのだ。
ただもしかしたら、叶恋のことばかり考えているせいなのかもしれない。
そこまで頭が回らないのかもな。
「そういえば、叶恋ちゃんだっけ?とはどうなんだ、透」
「へっ?」
「へっ?じゃないだろう。今、どんな感じだ?」
酔っているからか、いつもより上機嫌な父さんがそうニヤつきながら聞いてきた。


