30差の片想い







 終わった。

 終わった。


 あの、苦しい時間も。

 全部、全部。



 不思議と悲しくはなくて、逆にすっきりとした気持ちになった。

 もう、傷つかなくていいからだろうか。


 神様にずっと願っていた。

 〝この恋を終わらせてほしい〟って。

 今、叶ったよ、透。


 恋が終わることに寂しさは残るけど、あたしの気持ちは晴れていた。






 そうか。


 センセイと一緒にいても辛くなかったのは。

 もう、好きじゃなかったからだ。


 心の中のしこりがまた一つ取れて、少し嬉しい。





 ……だけど、まだあと一つ、残っている気がする。

 とても大きくて、大切なこと。


 それに、センセイへの恋は終わったはずなのに、あたしは今、恋している気がするんだ。


 誰に……?

 そんなの、分からない。





 でも、一つだけ心当たりがあるとするならば。





 あたしが恋しているのは、



「と、おる………?」




 透の顔が、何故か浮かんだんだ。