30差の片想い








「叶恋………」


 久々に見る叶恋の顔は、とても悲しそうだった。



 可笑しいな。


 前も、よく見ていたはずなのに。

 今では俺のせいだと思ってしまうよ。



「透、あのね……」


 どうやら、叶恋は俺を待ち伏せしていたらしい。

 だって今は、池の前で丸まってなどいなくて、俺の存在に気付くと俺の目の前まで駆けてきたから。


 そして俯きながら、必死に話す言葉を探している。



 ああ、やっぱり叶恋は小さいな。

 だから、すぐに触れたくなってしまう。


 優しくて、純粋で、綺麗だから。




「……仲直り、したいの」

 叶恋はそう小さい声で言った後、俺を見上げた。

 その瞳は、微かに濡れているが真剣そのものだ。


 ……嬉しかった。

 俺もって、本当なら言いたい。


 でも、叶恋には幸せになってほしいから。



「……なんで?」

 邪魔者は、消えるのがお決まり。

 だから、わざとそう冷たく言い放った。