別に、悲しくなんてない。
寂しくも、ない。
良かったじゃないか。
叶恋の恋は、実るんだ。
叶恋は、幸せになれるんだ。
ああ、そっかそっか。
叶恋は名前通り、<恋を叶える>のかもしれないな。
これで、安心できるな。
俺、不安にならなくても済む……。
「………ま、別に、俺はどうでもいいけど。ああ、それと、さっき言った言葉、そっくりそのまま返しますね」
俺はそう言って、泉田を真っ直ぐ見つめた。
「愛してるなら、泣かせんなよ」
そして、軽く微笑んだ。
何故か痛む胸は、必死に抑えた。
「いや、ちがっ……まあ、それだけだ!気を付けて帰れよっ!!」
泉田はそう言うと、足早に去って行った。
「……ったく、素直じゃないな」
泉田には、叶恋のことが好きなら、奥さんと別れて欲しいって思う。
中途半端な気持ちで付き合ったりして叶恋を傷つけたら、許さない。
ああ、それも言っておけば良かったかな?
俺はそれから、帰路に着いた。
家にはすぐ着くけど、今日は何故だか家までの距離が長く感じた。


