30差の片想い







 まるで、まるで。


 それってさ、叶恋のこと……




 好き、みたいじゃん?





 でもな、叶恋のことなんも分かってない俺だけど、一つだけ分かってることがあるんだよ。



 叶恋の恋は、叶わない。


 だって泉田は、奥さんを溺愛しているから。

 そんな泉田にそんなこと言われたって、俺の心には響かない。


 だからさ、もう二度と叶恋には言うなよ、そんなこと。



「……泉田先生には、関係ないですよね」


 俺は泉田から目を逸らした。

 その反応が泉田の勘に障ったのか、泉田はもっとキレた。



「関係あるっ!」


「ハア?ただの担任のお前に?なんの関係があるって言うんだよ……」


 俺はふっと笑って、髪を掻き上げようとした。


 ……でも。

「俺はただの担任だ!でもな、櫻井は俺にとって大切な人なんだよっ!」


 髪を掻き上げようとした手が、凍りつくように止まった。

 そして俺は、ゆっくりと泉田の顔を見る。


 泉田の目は、真剣だった。



 大切な、人?