30差の片想い






 どうしてそんなことを聞いたのか?と思った。

 どうして俺が話題に上がったのか?と思った。


「俺、見たんだ。お前ら二人が仲良さそうに駅のホームにいたの」


「……っ」


 それはきっと、あの日のことだろう。

 俺の家に、叶恋が上がった日。

 その帰りか……。


「あまりにも仲良さそうだったから、何となく分かってたけど……彼氏いるかって櫻井に訊ねた時、はっきりと分かったよ。お前ら、付き合ってるんだな」


 俺は一瞬にして背けていた顔を泉田に戻した。

 こいつ、何言ってるんだ……?


 俺と叶恋が、付き合っている?

 ふざけてるのか?




 今やっと、分かった。


 泉田は、かなり鈍感だ。


 だから、叶恋の気持ちにも気づかないんだ。

 本当は、今の今まで気づかないフリをしてるのかもって少し疑ってた。

 でもどうやら違うみたいだ。

 叶恋のこと、分かったフリしてんじゃねえよ。


 そして鈍感だからか、俺の明らかな戸惑いにも気づかない。



「んんっ…櫻井はな、お前とのことを聞いたら泣いたんだぞ?」


 でも、泉田のその言葉は、俺の心を突き刺した。



 叶恋は、俺のことを聞かれて泣いた……。


 つまり、あいつがあんなに頑なに堪えていた行為を、俺がさせた。

 俺のせいで、叶恋は初めて泉田の前で泣いたんだ……。