30差の片想い







 どれだけ池の前で泣いていても、決して泉田の前では泣かなかった叶恋が、泉田の前で泣く?


 そんなの、信じられない。



「……?ああ、そうだ」


「ま、た、なんで……」


「?どうかしたのか?」



 不思議そうな泉田の声に、全てを悟った。

 そうか、こいつがまた、変なこと言ったんだ。


 俺は、泉田を睨んだ。

 教師なんて、気に出来なかった。




 どうしてお前は、叶恋を傷つけることしか出来ないんだ?


 俺じゃ、ダメなんだよ。

 お前じゃなきゃ、叶恋を幸せに出来ないんだよ。


 なのに、どうして。

 いつだってお前は叶恋の気持ちに気付かない。

 いつだってお前は、叶恋を傷つけている。


 今にも殴りかかりそうな気持ちを必死に堪えた。

 俺がどうのこうの言ったところで、こいつは、叶恋の現実は変わらないからだ。




「……なんでも、ないです」

 必死に平静を取り繕った俺は、泉田から顔を背けた。



「……櫻井に聞いたんだ。お前と、速水とどうなんだ?って」


 俺は目を見開いた。

 一瞬、思考が停止した気がした。