止めてあげてって、あたしの心が叫んだ。
苦しいよって、透の心は叫んでいる。
その優しい瞳が、きっと透を苦しめている。
何も知らない無邪気な笑顔は、あたし達には痛いの。
透の瞳から感じ取った、透の想い。
それは、涙が出るほど悲しいものだって、あたしは思う。
お母さんといる時の透と、家族でいる時の透は全く違う。
お母さんといる時の透は、切なげな表情だけどまだ笑顔がある。
それはきっと、〝好き〟だからだろう。
だけど、家族三人でいる時の透は、まるで自分を消しているようだ。
言葉の一言一言が、心がないみたいに冷たい。
きっと、少しでも気を抜いたら想いが溢れ出そうなんだろうな。
それくらい、辛くて苦しい想いなんだろうな。
透が傷ついている姿、初めて見たかもしれない。
ー-守ってあげたい。
ー-助けてあげたい。
そう思ったあたしが口にした言葉。
「ね、ねえ、透!そろそろ帰ろうと思ってるんだけど、送ってってくれないかな?」
「え?……ああ、うん」
そう言った透の優しい笑顔に、少しほっとする。
そんなあたし達の会話を聞いた透のお母さんは、
「あら?もう帰るの?」
「はい、親が心配するので」
「そうね、気を付けてね。」
「はい、ありがとうございます。チョコクッキー、美味しかったです」
そう言ってあたしが笑った時、
「また来てね」
ソファに座っている透のお父さんが、こちらを振り向いてそう言った。


