30差の片想い







「透が連れてきたのよ」

 透のお母さんはそう、嬉しそうに言った。

 その言葉を聞いた透のお父さんは、優しく微笑むと「そうか」と言った。


「は、初めましてっ!お邪魔してます」


「初めまして。透の父です」


「あたし、櫻井叶恋です!」


 ちょっと緊張しながらそう挨拶すると、透のお父さんはにこっと笑って透の方を見る。


「へえ……可愛い子だね、透」


「……別に、そういうんじゃないから」


「透はずーっとそう言ってるのよ」


 優しい笑顔の透の両親。

 一方、透は。


「っ……」


 透の顔を盗み見た時、泣きそうになった。

 あたし、関係ないのに。



 ……透の顔に、笑みは一つも浮かんでいなかった。


 透の顔は、悲しそうで、切なそうで、今にも泣きそうで、今にも崩れそうで。

 きっと、現実をまた、突きつけられてしまったからだろう。

 きっと、透の心は今、とてつもなく苦しいんだろう。



 今日、気付いたことがある。

 透を包むこの家は、とても優しい。


 お母さんも、お父さんも。

 透のことをとても大事に思っているのが、二人の瞳の色から手に取るように分かる。

 いつだって、優しい眼差しを透に向けているから。