逢って、愛して


生徒会も終わり、バスから降りて電車を待っている。
長い道のりではあるが、自転車の真涼よりかは幾分楽かもしれない。

駅員の声や電子看板の音が響くプラットホームに降りると、ズボンのポケットに入れていたスマホが鳴った。

ディスプレイを見ると「兄貴」の文字。

おぉ、珍しい。
今海外で就職している兄貴から電話とは思わなかった。


「もしもしー?」
[よぉ翔也、学校どうだー?]


陽気な兄貴の声にふ、と笑ってしまった。
外国に行っても変わらねぇな。


「アバウトだな、問題ないけど」
[ほー、そうか]


ふんふん、と何かに納得している兄貴。
一体何なんだよ、と思いながら黙っていると「あのさ」と話を切り出された。


「こっち…海外に来ねぇ?」


ガタン、ゴトン。

電車が、目の前を通り過ぎていった。