ん……?


太腿の辺りに違和感を感じて、
私の瞼がゆっくりと開く。


辺りは、真っ暗。


目の前のスクリーンには、巨大隕石が火を吹きながら、地球に迫ってくるシーン。

緊急事態を知らせる英語の男の声。


いつの間にか私は、眠ってしまっていた。


あっ…


口から出そうになった声を私は、飲み込んだ。


私の右の太腿には、大ヒトデのような手が置かれていた。


……男の手。


ぞぞっと全身に鳥肌が立った。


空いていたはずの隣りの席に、誰かが座っている。

空席ばかりなのに、不自然な行為。


痴漢だ…!


思い出ある大事な場所で、こんな目に会うなんて…!


ふう…ふう…という荒い鼻息を首筋に感じた。気持ち悪い!


反射的に、ぱっと手で男の手を振り払った。
なのに、腿を軽く掴んだそれは、根を張ったように動かない。


ワタルとやる痴漢ごっこプレイは、嫌いじゃないけど、本物の痴漢は大嫌いだ。


見知らぬ男にタダで身体を触らせてやるほど、私はお人好しじゃないし。

イヤ。
お金を払われても困るけれど。