「桜ちゃん。その辺で勘弁してやったら?」
私とワタルの前に、スッと2杯目のカクテルが置かれた。
カウンターの向こうにいるのは、髭を生やした蝶ネクタイの男。
親しげに私の名前を呼ぶのに、ワタルの眉が一瞬ピクリと動いた。
「もう、マスター軽く言わないで!
私、すごく傷付いたんだから」
私はグラスを手に取り、頬っぺたを膨らませた。
「あれ?仲良さそうだけど、2人は知り合い?」
ワタルが、グラス磨きをするマスターと私を交互に見る。
「桜ちゃんは、高校の後輩なんですよ。世代は違いますが」
渋い声で答える松本さん。
その声…いいなあ。子宮にジンジン響く…
昼間の感覚が蘇り、身体が疼いてしまう。
へえ、そうなんだ、とワタルは頷き、カクテルを啜る。
「こうして、カレシが東京から追いかけて来てくれたんだから、フィフティ・フィフティって事にして仲直りしたら?
カレシの言葉を信じてあげてさ」

