「…おはよう」
私は祐樹くんと話した次の日、学校に行った。

体調がよくなったからだ。

でも今日は私の大嫌いな……音楽がある
「…葉月ィ…………」
「んーどうした??桜!!」
「…音楽………」
「あ、今日音楽なのか!!…ん?音楽嫌いなの?」
「…に、苦手…」
「あははっ、なにいってんのー??!トロンボーンやってるんだから!!!」
葉月は相手にしてくれないぃ…………
「…おい。」
「…あ、祐樹君…」

ふと隣を見ると祐樹君の顔が。
「音楽大丈夫なのか…?歌のテストあるぞ…?」
「…………………………………うん、とりあえず頑張ってみる」

今さらいい声が出るとは思わないし。

とりあえず、がんばってみるか……















「はい、長野さん」
「…はい…………」
音楽の授業。

今日の歌のテストは「風と」という歌。

私は主席番号12番なので、真ん中くらい。

祐樹君とは、同じクラスなんだよね…最初の頃は結構周りが見えてなかったけど、今は友達もたくさんいる。

葉月がここのクラスなら尚更よかったなぁ……
とか思いつつも、「風と」の伴奏が始まる。







「…~~♪♪」






















曲が歌い終わると、皆静まっていて。

そうだよね…こんな声じゃそう思われるのも仕方な…
「凄いわよ!!長野さん!!!」
「…えっ?」


ふと見ると先生が目を輝かせながら興奮気味にいっていた。

そしてドアの方を見ると…
「…げっ……」

なんか他のクラスからも集まってきてるし。

時間を見ると、ちょうど休み時間に入ったらしい。


そして、うちのクラスもなんだか盛り上がっていた。
「すげーーー!!長野!!!」
「私、音痴だけどこんな私でも長野さんの音程がピッタリってわかった!!」
などと。


……………………あ。


ドアを見ると目を輝かせた葉月の姿。


……あんまり、ばれたくなかったな。












憂鬱な気分で席に着いたのだった。



【祐樹Side】

……すげぇ。

俺は歌のテストをやっている…桜の姿を見て唖然としていた。

ピッチも、リズムも、テクニックも………

完璧すぎて怖いくらいだ。


しかも、何と言っても…

「美声」

すぎる………………。


チラッと後ろを見ると
「やっぱ来てるよな…」
と呟く。こんなよく通る声が学校に響いてたらそりゃ見に来るだろ。


でも、その正体が桜だってきいたら、男子からの人気も上がるだろうな。

彼奴は無自覚だけど、結構桜モテるし。

ふわっとした髪型に愛らしい顔。

身長は低い方だが、逆にそれがいい!!と男子には言われてる。

性格も驚くほど純粋で優しいし…。

でも、そんな桜がトロンボーンを吹いているというギャップで更に女子にも男子にも好かれているのだ。






…俺も、その一員だけどな。

でも彼奴、結構目立たないようにしてるからこれは…マズイだろ。

「「「ありがとうございましたー!」」」

授業が終わり、挨拶をすると桜が寄って来て。

「…どうしようぅ………………」
「…だな。」


ドアを見ると桜のお通りを待ち構えるかのように、他の学年からも熱い視線が。
「…よし。逃げるぞ」
「…え………!?」
俺は急いで、桜の手を取って走り出した。





「…ハァッ……ハァッ……」
「…わりィ………ダッシュしちまって…」
「…大丈夫…ッ」

桜は体力に自信がないらしく、もう息を荒げている。



にしても。この前の彼奴の話には驚いた。

桜があんな過去を…

思い出すだけで、胸が痛む。

いつか、俺が桜の役に立てれば…………

そう思った。