次の日。
私は部活を休んだ。

体調が悪かったため、家で休むことにしたのだ。

(…昨日の祐樹君の顔。)

まるで自分のことかの様に、悲しい顔をしていた。

(…お願いだから。あんな顔しないで…)

布団の中に潜っていると、玄関のインターホンが鳴った。


インターホンを見ると、そこには葉月と祐樹君の顔。

私は恐る恐る、玄関のドアを開けた。

「桜ぁー!!心配したよーー!!!」


飛びついてくる葉月と、呆れ顔の祐樹君。

「1日桜が休んだだけでこいつ、ずっとショボンってしてるんだもんな。」
「それほど桜が好きなの!!」
わいわい言い合い二人。

「あ!そうそう!桜に渡すもの!」
「私に?」
不思議に思って問い掛けると、譜面を私に差し出してきた。
「ん、アンコンか。」
「うん!!」




アンコン、とはアンサンブルコンテストの略で毎年選抜で選ばれた子達が演奏するのだ。
でも、8人くらいの少人数で行うコンテストで、配られた譜面の中から受かりそうな物を選び、練習して先生にオーディションしてもらうものだ。



「桜は2枚しか貰えなかったねー…クラリネットなんか、10枚も貰ってたし!」
「羨ましいよなー。」


じゅ、10枚…
さすがにキツイ……

「えとえと、確かー…「晴れた日は恋人と市場へ」と、「ポエム」だよ!」



一通り目を通して見るが…連符だらけ。

しかも、私の譜面…バストロンボーンじゃん……
「低い音無理…出ない…」
「なら俺のと交換する?俺の高音割と多いんだよな…Part5で良ければ。」
「うん、お願い。」


譜面を交換して、譜読みをしていると。

「あー!!私、家の用事があるから帰らなきゃ!!」
と言っておもむろに立ち上がる葉月。

「え?帰るの?」
「うん…ごめんねぇ……譜読みしたいけどさー…」
「うん、そっか。…仕方ないね」
「マジごめん!!!じゃ、またあした!!!絶対来てね!!」
「うん!」

慌てて走っていく葉月を眺めていると脇から「…おい。」と声をかけられた。
「ん?」




振り返ると、祐樹君の距離が近くて…




「…昨日。昨日の屋上の話。」

「……………」




私は口をつぐんだ。

「わり…なんか。空気悪くして。」
「ううん。」
「…お前が話せるまで、俺。待ってるから。」





そう言うと「じゃ。明日。」といって足早に帰って行った。