「では、来月からはこちらの条件でお願いします」
「はい、本当にありがとうございました。失礼いたします」
そして二時間ほどの話し合いを終え、橋本さんは深々と頭を下げ席を立つ。
「下まで自分がお見送りいたします」
「えぇ、日向お願いね」
「はい」
そして橋本さんとともに日向は部屋を出る。バタンと閉じられたドアに、その場には自分ひとりが残された。
「……ふぅ」
結局取引条件は向こうの要望通りのまま、とまではいかなかったけれど、極力それに沿えた形にはなったと思う。
これからも取引は続けられることに私も安心したけれど、向こうはよほどプレッシャーを感じていたのだろう。彼の手元のハンカチは汗でびっしょり濡れていた。
書類をまとめ、体をうーんと伸ばしていると、橋本さんを見送り終えた日向がスタスタと戻ってきた。
「ミサキインテリアさん、今お帰りになられました」
「ご苦労様」
「エレベーターの中で少し話したんですけど、びっくりしてましたよ。『宝井社長ってあんな表情するんですね』って」
「今日はなかなか様になっていたでしょう?」
「えぇ、満点ですね」
ふふんと笑えば、日向もにこにこと笑う。まるで私の気持ちを読んでいるかのように。
……相変わらず、日向に踊らされている感じが、少し悔しい。



