「社長、待ってください」
「なに?」
「はしゃぐのは結構ですが、建物内はまだ建設中ですから。一応ヘルメットくらいかぶってくださいね」
日向はその言葉とともに、『安全第一』と書かれた黄色いヘルメットを私の頭にカポッとかぶせた。
「うん、よくお似合いで」
「……嬉しくない」
バカにしているのか、褒めているつもりなのか……いずれにせよ不快な言い方に不機嫌になりながら、私はヘルメットの留め具を顎のところでパチンととめた。
時々見せる、日向の見守るような瞳。歳も大して変わらないくせに、バカにしないでよ。そう思うと同時にその目がどこか嫌いじゃない自分がいる。
……なんて、言ってやらないけど。
「向こう側が見たいんだけど、行ってもいい?」
「はい、どうぞ。日向さんもよろしければご一緒に」
「えぇ」
一度は止めた足を進め出し、奥へ向かう私に日向も続いて歩き出した。
社長として働いているのだから当然かもしれないけど、私はこういった建築デザインが好きだ。
特に現場を見るのは、楽しい。図面で見ていても、実際のものはまた違っていて、作りかけのその部屋が、これから先どんな場所になるのかわくわく感を感じさせるから。
まっさらなこの部屋には、理想と想像、沢山の可能性が溢れている。



