「架代さんはご自分で運転はされないんですか?」
「なによ、悪い?」
「いーえ、神永さんからも『社長が外出する時は社用車で送迎すること』って言われてたので、免許持ってないのかなーと」
何気なく疑問を言葉にしたのだろう、車のキーを手に後ろからかけてくる。そんな日向に先にエレベーターに着いていた私は、下りのボタンをカチッと押して答える。
「持ってるわよ、一応。でも免許とりたての頃、電柱に突っ込んで大きな事故起こしたから運転したくないの」
「あはは、運転下手そうですもんねぇ」
「悪かったわね!」
確かに下手で、免許もやっととれたけど!
どこまで見透かしているのか、へらへらとした顔で言い当てながら日向は隣に立つ。私より二十センチほど高い位置にある涼しい瞳は、こちらへ向けられた。
「今日の視察は確か、完成間近の裏原宿のカフェでしたっけ」
「えぇ。新規オープンするカフェの内装デザインをうちの社員が担当したんだけど、取引先がえらく絶賛していてね。私も一度見ておきたくて」
「そうですね……っと、架代さんちょっと失礼しますね」
「なに?」
話しながら日向は、指先で私の髪をススッと整え、スーツの襟やスカートのシワをピッと正す。
自分では気付けない部分も身なりを整えてくれているのだろう、そう分かってはいてもいきなり触れられるのは、正直少し心臓に悪い。



