気を取り直し、取り掛かった仕事。今日も日向はてきぱきと作業をこなす。
「架代さん、東和ビルディングの野呂社長がいらっしゃってます。お通ししてよろしいですか?」
「えぇ」
取引先が来れば通して、にこやかに出迎えお茶を出す。書類も言われる前から用意して……本当、秘書としてならつくづく出来る男だと思う。
「新しい秘書さん、よく出来る方ですねぇ」
「え?そう、ですか?」
「えぇ、気も利くし笑顔も素敵で、頼もしいですねぇ」
契約の話をしに来た以前からの取引先の社長は、そう日向を褒め、話を終えると「ではまた」とその場を去って行った。
バタン、と閉じられたドアの音が響く中、隣を見ればその顔がニヤニヤとだらしなく緩む。
「……何よ、アホ面」
「いやぁ、褒められましたねぇ。よく出来る秘書、ですって」
普段私が褒めることがないからか、先程の社長の一言が嬉しいのだろう。私だって普段から思っていないわけじゃない。だけど、言うのが癪だから言わずにいるだけだ。
「調子乗ってないで、車出して。今日はこの後現場視察行くんだから」
「はいっ、喜んで」
白いショルダーバッグを手に部屋を出る私に、日向は追いかけるようにバタバタと支度をする。



