「なんなのよ。あれ……全く会議にならないじゃない」
「緊張してるんですよ。社長と話すのなんて初めてな社員ばっかりですから」
「それも分かるけど……」
そこまで緊張する必要なんてないじゃない、そんな気持ちを表すようにまた眉間にシワが寄る。
「あ、あとですね」
「え?」
その時日向は、突然両手で私の両頬を掴むとムニっとつまみ口角を上げさせた。
「は、はにふんほ!」
「うん、可愛い」
「は!?」
いきなり何!?
頬をつまんだまま、うんうんと納得する日向に全く意味が分からない。
「笑ってくれる人相手だと、安心しますよね」
「え?」
「逆に怖い顔してる人には、余計緊張するだけですよ」
それはつまり、私の表情が余計周りを緊張させているということ。
「さ、社員たちも少しは休憩出来たでしょうし行きましょうか」
「……えぇ」
そう笑うと、そっと頬から離れる指先。日向についていくように歩き出した。
笑顔で柔らかく話せば、確かに緊張感が和らぐかもしれない。けど、どうも私にはそれが難しい。可愛げがないというか、愛嬌がないというか……。
でも笑ってくれると安心、か。……分かっている、けど。



