「私は、社内を一通り歩き回って設備の点でも気になる点が多々あったんだけど、それをみんなはどう思ってる?気になるなら改善が必要だし、気にならないならそのままでいいだろうし」
「いえ、えーと……」
「自分の働く会社のことなのに、意見のひとつも出ないの?」
あまりにも進まない話に、ついこちらもピリピリしてきてしまう。それを感じて余計重くなるその場の空気。
「社長、少し休憩しませんか」
「……そうね。なら十分だけ」
「はい。では皆さん、一旦休憩で。十分後にまた再開しますので」
そんな場を気遣ってか、日向からは休憩時間の提案。その言葉を合図に、社員たちは席を立ったりとそれぞれに動き始めた。
「はい、じゃあ社長はあちらの部屋で休憩しましょうね」
「え?別に私は……」
「いいから、いいから」
そんな中、日向は私の肩を抱くように引っ張り会議室を連れ出す。
そして入ったのは隣の小さな応接室。小さなテーブルと椅子がふたつ、それだけの物があるだけの部屋で私は「はぁっ」とため息をついた。



