愛してもいいですか




……ところが。



「えー、では何か現在社内での設備や待遇、人事などで意見のある方は挙手をして発言をお願いします」



小さな会議室の中、にこやかに進行をする日向に対し目の前に座る社員たちは無言で下を俯く。



「えー……じゃあ、営業部の錦織さん。何かありますか?」

「えっ!あ、えーと……特に、ないです……」

「じゃあ隣の経理部の笹原さん」

「と、特にないです……」



日向が一人一人を指し意見を聞こうも、“社長との会議”という空気にのまれているのか、皆して『特にない』の言葉ばかり。……正直、全然会議になっていない。



「え、えーと、本当に何もないの?別に何か言っても怒ったりしないし、気軽に言ってほしいと思うんだけど……」



自分なりに優しく言ってみるものの、やはり社員は黙り込んだまま。指されたくない気持ちからか、こちらと目を合わせようともしない。