「何よ、その顔は」
「さすがに俺も秘書としてのプライドっていうか、ジェラシーっていうか……」
「仕方ないでしょ。神永とは付き合いの長さも違うんだから」
そう、神永とは私が社長になった時から、もう四年以上の付き合いがある。
社長として就任した頃、自分の立場がどういうものか、どうするべきなのか。自分で勉強してきたことなんて、実際にはほんの少しにしか武器にならなかった。
だけど、それを上手く支えてくれたのは他でもない神永だ。
「神永は優秀だし、頼りになるし……それより何より、『お兄ちゃん』って感じなのよ」
「お兄ちゃん、?」
「えぇ。私は一人っ子だからイメージでしかわからないけど、きっとお兄ちゃんがいたらこんな感じなんだろうなーって」
優しくて、頼もしい。そんな彼は“兄”の感覚が一番近いと思う。
「ふーん……」
私の言葉にも、その顔はまだ不服そうなまま。



