「そんなことしなくても、出会いならここにもあるじゃないですか」
「え?」
そして、からかうように浮かべられた笑みはそっと近付く。身を屈め迫る顔から、一瞬だけ垣間見えた表情は“秘書”ではなく、“男”の顔。
……あ、まずい。
きっと、触れてしまう。そう感じた瞬間、私は手にしていた書類をその顔面へバシッと叩きつけた。
「ぶふっ!」
「アホなこと言ってないで仕事して。クビにするわよ」
「はいはーい、もう架代さんってばガード固いんですから……。まぁそれくらいお固いほうが、秘書は安心ですけどね」
「安心?」
「えぇ。ある日いきなり子供出来たから会社辞めまーす、なんて社長では会社の行く末が心配ですから」
書類を叩きつけられた顔面をさすりながらへらへらと笑う、その男の言葉から察するに……つまり今の行動は私を試したということ。
「っ……バカにするんじゃないわよー!!!」
キー!と声をあげる私に、日向はあははと笑顔のまま。



