愛してもいいですか




「知ってます?営業部の頃、架代さんって有名だったんですよ。『いびられてる新入りかいる』って」

「え!?そうなの!?」

「はい。実際俺もそれで架代さんのこと知って、それで見かけるようになってから『美人だなー』って思って」



し、知らなかった……。

違う部屋で仕事をしている人にまで知られていたと思うと、恥ずかしいやらみっともないやら……。

汗で乱れた髪を手で整えようとする私に、日向はそっと手を伸ばし整えてくれる。



「正直その頃俺はなんとなく仕事してたから、いびられてまでここにいる架代さんの気持ちなんて分からなかったんです。けど、前に話した廊下でぶつかった時に目キラキラさせてる架代さんを見て、『だからか』って納得出来た」

「え……?」

「きっとこの仕事がしたくて、何か目標があって必死に勉強してきたんだろう。だからこそ、つらいことにも耐えられるんだろう、って。……そんな架代さんと比べたら、自分はなんて小さいんだろうって」



出会った一瞬で、そこまで感じ取ってくれた?

高い位置にあるその顔を見上げると、髪を整え終えたその指先はそっと私の顔を包むようにして触れる。



「それでいつしか架代さんを目で追うようになって、頑張り屋で、時々可愛い笑顔を見せる架代さんに気付いたら夢中になってた」



両手で私の顔を包み、彼が真っ直ぐに伝える言葉は、ずっと私を見ていてくれたということ。



「でも近付くどころか、実は社長の娘で、おまけに急遽とはいえ社長になるし……一気に立場が違う存在になって、さすがに気が引けた。だけどそれで諦めるなんて出来なかった。架代さんの近くにいたくて、秘書課の話を受けて、勉強もした」

「……それで、偶然神永からの秘書交代の話?」

「はい。チャンスだと思いました。秘書になったからには全力で、あなたの役に立ちたいと思ったんだ」



私の、ために。その一心で。

まるで夢のよう、本当のこととは思えない。けれど、信じたいと思う。その真っ直ぐさを。

気持ちは波のように一気に押し寄せ、瞳からは涙が溢れ出す。