「っ……はぁっ、日向、ストップ、ストップ……!!」
それからどれほど走っただろう。ただでさえ動きづらい着物で、日向のペースに合わせ無我夢中で走ってきた体はついに限界を超え、叫ぶように言って足を止めた。
「く、るし……げほっ、ごほっ……」
「あっ……すみません!大丈夫ですか!?」
息苦しさに咳き込む私にようやく我に返ったらしく、日向は自分の息を整えるより先に、慌てて私の背中をさする。
見渡せばそこは、料亭からしばらく来た先にある、オフィス街のはずれの小さな公園。
噴水や花壇など自然に囲まれた公園の端に立てば、日曜のオフィス街だからか、辺りは静かだ。
あつい、苦しい……。
着物も着崩れしているし、汗で化粧もドロドロ。足元に至っては夢中で飛び出してきたから足袋のまま、底も真っ黒に汚れてしまっている。
ひどい格好。だけど、つないでいた手が熱くて、ドキドキする。
「落ち着きました?水買ってきます?」
「……いい、いらない……ごほっ」
ようやく呼吸を整え、大きく息を吸って落ち着く。目の前の日向は、私以上に汗をびっしょりかきゲホッと小さく咳をした。
「あんた……データ飛ばして、日曜出勤してるんじゃなかったの……?」
「はい、だから昨日から寝ずに作業して、今さっき終わらせてその足でここまで来ました」
本当に一睡もしていないのだろう、よく見ればその顔には珍しく疲れが見える。



