彼は自信満々に言うと軽い笑顔をへらっと見せる。
「宝井さんが働いて、俺が家のことをやる。それってお互いに補い合えていいんじゃないですか」
「そうですね。……でもひとつ、聞きたいことがあるんです」
「聞きたいこと?」
そんな彼を見据えて言った言葉は、自分でも驚くほど冷静で穏やかだ。
「私、家事自体全く出来ません。部屋も汚くて、料理も下手くそで、洗濯もすぐ溜め込んで」
「だから、それは俺が……」
「いつも仕事優先で、用事があってもドタキャンするかもしれない。他人に平気で土下座だってしますし、社員には避けられるような人間です」
女として、人として、欠点ばかりの私。
「そんな私と夫婦になって、いつかもし何かがあった時、何千万という負債を一緒に背負ってくれますか?何百人もの社員とその家族の重みを、一緒に背負ってくれますか?」
お互いに補い合える関係は、確かにいい。彼が私を支えてくれるのなら、彼のために私も支えよう。もし彼が病になっても、その苦しみを一緒に背負おう。
だけど、私だってずっと上手くいくとは限らない。いつなにが起きて、どうなるかなんて分からない。
その時に、こんな私を受け入れて、重みだって一緒に背負ってくれる。そんな人なんて、いないでしょう?
現実を突きつけるように告げた私に、そんなことまで考えていなかったのであろう彼は顔を引きつらせる。



