『あなたの気持ちは、どこにあるんですか』
神永の一言が、頭の中をぐるぐるとめぐる。
私の気持ちは、どこにあるんだろう。周りに言われて、諦めて、それで終わりでいいんだろうか。
松嶋さんに本音を告げた時のように、『後悔しない』と言い切れる?
抱いたこの愛しさは誰かと結婚して、消える?
「初めまして、三好と申します。本日は本当にありがとうございます。こちら、息子の健一郎です」
「初めまして」
通された広い和室で、大きなテーブルを挟み向かい合うのは私の父と同年代くらい……おそらく三好さんのお母さんであろう女性と、その隣に座る男性。
紺色のスーツに緑色のネクタイ、金と茶色の混じった髪はやはりホストのように盛っていて、少し色黒の肌にシルバーの大きな指輪が光る。
写真で見るより若い印象の彼は、ぺこ、と小さく頭を下げると笑顔で私を見た。
「……初めまして、宝井架代と申します。本日はこのようなお話をいただきありがとうございます」
「宝井英三社長の秘書を務めております、神永と申します。本日他の者が不在のため、代わりに付き添いとさせていただきます」
座敷に座ったまま深々と頭を下げる神永に、三好さん親子も応えるように礼をする。



