愛してもいいですか




どうやら急ぎの内容ではないのだろう。日向の指示に頷く女性社員に、日向はまたへらっと笑うと彼女の肩へ手を回した。



「総務も忙しいでしょ、大変だねぇ」

「えっ!?あっ、いえっ……」

「特に作田ちゃん、いつもバタバタしてるもんねー。なんか痩せた?肩小さいよねぇ」

「やだ、また日向さんってば……」



……って、またやってる!!

イラァッとする私の視線に気づくわけもなく、日向はその女性社員とともにエレベーターへ乗って行った。



本当、あいつは……どうしてああも軽々しいの!?

第一印象で植え付けられた、軽い男というイメージ。それは一ヶ月間あいつを見ても変わらない。

隙あらば女性社員に声をかけて、『〜ちゃん』と馴れ馴れしく呼んで、肩を抱くわ手に触れるわ……挙句私にまで先ほどのように軽々しく触れる始末。



人懐こいといえばそうなのかもしれない。愛想だっていい。だけど、異性にだらしないというのは理解できない。

あんな男、今すぐにでも難癖つけてクビにしてやるわ。……そう、思うのに。

目を向けた室内にはホコリひとつなく、ファイルや本がぴっちりと綺麗な形で並べてある。デスクの上には、種類別にきちんとクリップで仕分けられた書類たちと、整った文字で今日明日のスケジュールが記入されたメモ。それらは日向の丁寧な仕事の証だ。



……これさえなければ、すぐクビにしてやるのに。

こんなに完璧な仕事をされては、文句のひとつも出てこない。「はぁ」と溜息をひとつついて、私は仕事を再開させた。