愛してもいいですか




「そう言われましても……彼女を作る暇がないんですよねぇ。それにあんまり興味がないというか」

「興味ない?日頃あれだけチャラチャラと女子に絡んでてどういう意味だよこのチャラ男!」

「あれはスキンシップの範囲ですから」



それにああして軽い態度をしたほうが、警戒心の薄れた社員たちからあれこれ話を聞き出しやすいし。そう心の中で呟くと、ビールをまた一口飲む。



「そういや日向って、昔から社内恋愛とかの噂って聞かないもんなぁ」

「俺は会社の外で遊ぶ派だからねぇ」

「うわ、やっぱりただのチャラ男だ」



同期の言葉にふざけて返すと、その場はどっと笑いが起きた。

するとその時、ガラッと居酒屋のドアが開く音と「らっしゃい!」と店員の太い声が聞こえる。



「あ、先輩〜。お待たせで〜す」

「おー、来たな」



そしてこちらの席へやって来たのは、私服だからか若干印象が違って見えるけれど、見覚えのある女性社員たちの顔。確か、デザイン部の人だったと思う。



「お、女子?いいねぇ、男くさい飲み会が華やかになるなぁ。ほらほら、隣おいで〜」

「私日向くんの隣がいいーっ」

「私もー!」

「また日向かよ!」



きゃっきゃとはしゃぎながら俺の隣や前に座る女性社員たちに、ゆとりのあった座敷は一気に窮屈になる。



「……先輩ー、女性来るなんて聞いてないんですけど」

「まぁまぁ、たまには良いじゃん。日向来ると女子の集まりいいんだよ」



……要するに、他部署入り混じっての合コンのようなものなのだろう。男同士飲み会だからと気軽に来たのに。

若い頃はまぁ、女性がいても楽しかったけれど、酒の勢いを借りてくっついてくる女性もいたり、それであらぬ噂になりかけたりと揉めるうちにそういうのが面倒臭くなってしまった。



……架代さんと二人だったら、楽しいのに。

ばれないように小さな溜息をひとつついて、またビールを一口飲んだ。