……別に、本当はどっちでもいい。
冷たいお茶でも、温かいお茶でもいいし、たい焼きは確かに好きだけど別に銀座の餡子屋のものじゃなくても構わない。
だけどわざわざワガママを言って、あの男がどこまで耐えられるのかを見ている。……なんて、私は本当にタチが悪い。
だけどこの一ヶ月、日向はそんな私のワガママや偉そうな物言いに、怒ることも嫌がることもない。
それどころか相変わらずへらへらと笑っていて、『ワガママを言うことで日向を見定めている』という私の考えすらも分かっているかのよう。
何気なしに小さくドアを開け部屋の外を見れば、社長室から真っ直ぐ向かいに伸びた廊下の先にある、エレベーター。
そこの前では、つい先ほど部屋を出た日向が扉の開いたエレベーター前で誰かと何やら話をしている。
「あれ、総務の作田ちゃん。どうかした?」
「あ、日向さんお疲れ様です。この書類、社長宛に……」
それはどうやら総務部の若い女性社員らしく、一度エレベーターを降りた彼女に日向は書類を受け取り一度目を通す。
「あー、これね。わかった。今からちょっと俺おつかい行ってくるからさ、帰ってきたらまた総務部に寄って受け取るよ」
「えっ、でもわざわざいいんですか?」
「うん。今社長も書類たまっててそれどころじゃなさそうだしね」



