その日の夜、俺の姿は会社近くのとある居酒屋にあった。
「じゃあ、久しぶりのメンツに、乾杯!」
「乾杯ー!」
今日は秘書課の先輩や昔いた営業部の同期である男性社員たち数名と、久しぶりの飲み会。
同じ社内にはいるものの、普段はそれぞれの部署にいるのが多いことからこうしてきちんと顔を合わせるのは久しぶりな気がする。
男同士、ビールの入ったジョッキをコン、と合わせる音がにぎやかな声の溢れる小さな居酒屋に響いた。
「いやー、それにしてもあの日向が社長秘書とはな!すごいよなぁ、神永からの推薦だっけか」
「えぇ。神永さんと仲良いんで、そのよしみで」
「あの社長の秘書……どう考えてもきっついけどなぁ」
はは、と笑う先輩に同期も同情したような目で俺を見る。
苦笑いで首元のネクタイを緩めると、他の先輩は絡むように俺に肩を組んできた。
「おい日向〜、お前まだ彼女いないのか〜?」
「どうしたんですか先輩……」
「お前のせいでなぁ、しょっちゅう『日向くんって彼女いるんですかぁ?好みの子は?』って女子に聞かれるんだよ!さっさと女作って『彼女います』って宣言しろよ!」
いちいち聞かれることが疎ましいのか、先輩は俺の頬をつまみ変な顔にさせる。



