愛してもいいですか




「それで、どうなったの?」

『今デザイン部のリーダーや部長、それと日向が、エムスターの会社に出向いて謝りに行っているらしいんですが、相手が機嫌を直す気配もなく……社長に出てきて頂くしかない、と』

「ちょっと待って。日向が一緒に出向いているのに、どうして日向からこちらにはなにも連絡がないの?」

『それが……日向が“今日は社長には私用があって来られないから連絡もしないように。自分がどうにかするから”と連絡を止めているそうで』



日向、が……?

今日私が松嶋さんと会うのを知っているから。だから、連絡をしないでくれた?だけど、日向一人で片付けられる話じゃないかもしれない。



『出かけてらっしゃる中申し訳ないですが、とりあえず急いでエムスターに向かってください。足がないようでしたら、私がお迎えにあがります』

「待って、でも……」

『早く!大きな取引先をひとつ失ってもいいんですか!?』



大きな取引先を、失う……。

躊躇う私に対し、受話器から響くのは初めて聞く神永の強い声。

神永はそれだけ伝えると、「一度英三社長に外出の許可を頂いてからまたご連絡します」と電話を切った。



取引先とのトラブル……どうにかする、って言ってもいくら口のうまい日向でもどうにもならないこともあるだろう。

そもそもは、業務の引継ぎ確認を怠ったこちらの責任だ。エムスターが大きな取引先であって、取引を打ち切られでもしたら経営的に痛いことも確か。それどころか、周りの同業者にどんな話を広められるかもわからない。

これは、頭を下げてでもどうにかしなきゃいけないことは私でも分かる。だけど……。