愛してもいいですか




「もしもし?」

『お休みのところすみません、神永ですが』

「お疲れさま。どうしたの?」

『……その様子だと日向から連絡は行ってなさそうですね』



はぁ、と少し溜息混じりの神永の声に、ますます状況が読めない。



『今J.I.デザインの社員から電話がありまして、取引先のエムスター・コーポレーションとトラブルがあり揉めているそうで』

「えっ!?」



エムスター・コーポレーション……通称・エムスターといえば、うちの会社の取引先の大手ホテル会社。首都圏だけでもいくつものホテルを経営していて、そのロビーや部屋のデザインをうちが手がけている。

そこと揉めるようなことなんて、一体なにが……?



『なんでもエムスターから新しいホテルの部屋のデザインを依頼されていたらしいのですが、こちらの担当社員が病気療養の為、急に退職した際に引継ぎが上手く行かなかったそうで。期日は過ぎるし、エムスターの要望には添えていない、と散々な内容でついには向こうの専務が“取引をやめる”と怒っている、と』

「そんなことが…!?」



そういえば先月、デザイン部のリーダーをしていた社員が一人、体調が悪いからって退職していたっけ。まさかその社員が引継ぎを忘れて……?

そういった取引に関しては厳しいエムスターの常務が、カンカンに怒っていることはすぐ想像できた。