愛してもいいですか




「ほら、宝井さん。見てください」

「え?」



彼の声にはっと我に返ると、いつの間にか車はすっかり横浜方面へと来ていたらしいことに気付く。

慌てて窓の外を見ると、そこには街と街を繋ぐ大きな橋から見る、広い海があった。青い空がまるで絵に描いたように広がっている。



「わぁ、すごい景色!」

「本当、綺麗だね。晴れてよかった」



天気の良い日の土曜日、となれば出かけたくなるのは皆同じらしく、混雑する道路はずらりと渋滞している。

それに並ぶようにブレーキを踏む足に車は停まった。



つい窓の外に目を奪われていると、手元の赤いショルダーバッグの中からヴーと聞こえるバイブ音。



電話……?

誰からだろう、仕事用の携帯は置いてきたはず……。そう思いながらバッグの中を探り、プライベート用の白いスマートフォンを取り出した。

画面に表示されたのは『着信・神永』の文字。



「どうかしました?電話?」

「えぇ……出ても大丈夫ですか?」

「どうぞ」



神永……?

友人や家族なら後回しにしてしまうけれど、神永がこの携帯にかけてくるなんてただごとではないはず。そんな気持ちから確認をとり、通話キーを押して電話に出た。