「いやいやいや!政略結婚なんて出来るタイプじゃないのは、親の自分が一番よく分かっている!」
「へ?」
「架代は気が強いだろう?相手と仲良くなりたくても素直にはなれないし、気に食わなければつい言ってしまう。おまけに家事も出来ないし、仕事一番だ。そんな娘を嫁に貰うなど、普通の会社の社長や社長息子には無理だろう」
「あー……まぁ、そうですね」
悪かったわね、気が強い仕事優先女で……。
笑いながら否定するお父さんに、うんうんと納得する日向。神永がまた気まずそうに黙っている姿が簡単に想像つく。
「それに、何よりも願うのは架代の在りたい形を支えてくれる相手だ」
「在りたい、形……?」
「架代が仕事をしたいのならそれをサポートし応援してくれる、家庭に入りたいのならそれだけ甲斐性のある人がいい。可愛い娘が我慢や惰性で結婚しても、嬉しくないからな」
お父さん……。
私の、在りたい形を支えてくれる。私自身の、幸せのために。我慢でも惰性でもなく、自分が想う相手と。
今、私のなかで『結婚』という言葉に一番近い彼と、どうなるかはわからない。だけど、あなたがそう願ってくれるのなら、私はやっぱりいつでも後悔のない方を選びたいと思うよ。
その気持ちが、とても嬉しいから。
一度開けることを躊躇った戸を開け部屋に戻れば、こちらを向くシワの寄った明るい笑顔。
「おぉ架代、遅かったな!トイレ大きい方だったか!」
「ちょっと黙っててくれる?」
その笑顔の向かいに座って、私も小さく笑った。



