ボクはこれまで、一度も誰かを好きになった事が無かった。恋だの愛だの、くだらない。永遠の愛を誓っておきながら容易く裏切る連中がこの世界にはごまんと居る。綺麗なものなんて存在しないそんな世界で語る愛など無意味でしかない。
だけどボクは出会った。出会ってしまった。
「……例えば、さ、」
チャイムの音が鳴り止み、今井から視線をスッと外して、口を開いた。
「例えば、手当てされた指先が、温かいと感じたら」
今井はハッと息を呑む。信じられないという様な視線を肌で感じる。
「例えば、ボクの為にくれた絆創膏を、嬉しいと感じたら」
ボクの声が響き渡るようだ。
「例えば、ボクに向ける笑顔を、眩しいと感じたら」
今井は黙っている。
「例えば、名前を呼んでくれて、泣きそうになったら」
どうしてこんな事を言い出したのか自分でも解らない。
ボクは、この苦しみから解放される事を願っていたのだろうか。
一つ一つ、自分の中で言い聞かせるように、自分の中に巡る感情を確かめるように、それを整理する為に、丁寧に言葉を紡ぐ。
「例えば、眩しい笑顔を、見たいと思ったら」
今井は静かに話を聞いていた。
「例えば、その笑顔に会えて、嬉しいと感じたら」
全ての感情をこうして確かめれば、こうして誰かに伝えてみれば、愚かな程に、
「例えば、その人に、会いたいと、願ったら――……」
泣きたくなった。
「――お前が今持ってるその感情を、“好き”って言うんだよ」
とても静かで、落ち着いた声で、だけど今井は強い口調で言った。
何でこんな考えなしのバカに、ボクは。
だけどボクは出会った。出会ってしまった。
「……例えば、さ、」
チャイムの音が鳴り止み、今井から視線をスッと外して、口を開いた。
「例えば、手当てされた指先が、温かいと感じたら」
今井はハッと息を呑む。信じられないという様な視線を肌で感じる。
「例えば、ボクの為にくれた絆創膏を、嬉しいと感じたら」
ボクの声が響き渡るようだ。
「例えば、ボクに向ける笑顔を、眩しいと感じたら」
今井は黙っている。
「例えば、名前を呼んでくれて、泣きそうになったら」
どうしてこんな事を言い出したのか自分でも解らない。
ボクは、この苦しみから解放される事を願っていたのだろうか。
一つ一つ、自分の中で言い聞かせるように、自分の中に巡る感情を確かめるように、それを整理する為に、丁寧に言葉を紡ぐ。
「例えば、眩しい笑顔を、見たいと思ったら」
今井は静かに話を聞いていた。
「例えば、その笑顔に会えて、嬉しいと感じたら」
全ての感情をこうして確かめれば、こうして誰かに伝えてみれば、愚かな程に、
「例えば、その人に、会いたいと、願ったら――……」
泣きたくなった。
「――お前が今持ってるその感情を、“好き”って言うんだよ」
とても静かで、落ち着いた声で、だけど今井は強い口調で言った。
何でこんな考えなしのバカに、ボクは。

