I love you に代わる言葉

 今井が立っている場所は、ボクの靴が入っている靴箱の前だ。わざとだろう。
「邪魔なんだけど」
 無感情のままそう言えば、
「退いて欲しかったらちょっと付き合えよ」
 と言う。
 ボクは溜息をついた。
「アンタ帰ったんじゃなかったのか」
「誰が帰るって言ったんだよ。サボっただけだ」
「最後までサボったくせに学校に残ってたんだ? それなら帰るだろ、普通」
「いいだろ別に。考え事してたんだよ」
 そう言うもんだから思わず乾いた笑いが洩れた。
「ははっ、アンタが考え事? 何考えてたって言うのさ、その頭で。帰ってから考えればいいだろ。学校に残る意味が解らないね」
 馬鹿にしたように笑えば今井は押し黙る。
「さっさと退きなよ」
 こいつの行動に苛立って低い声を出す。放たれた怒気に後悔の念を抱いたのかその表情は歪んだ。
 僅かに身体を引いて怯むが、今井はそこから退く事はなく、恐る恐るではあるが震える声で反論してきた。
「……そ、そーだよ。俺はお前と違ってバカだから、どうすればお前が俺と一緒に煌宝へ行く気になるか何時間も考えなきゃわかんねーんだよ! 学校に残ってたのもその所為だっ!」
「は?」
 怒鳴りながら開き直る今井。こいつ、本当にバカだったのか。何か勘違いしているようだ。
「はは、アンタはバカだと思ってたけど此処までバカだったとはね。アンタが何時間考えようが、ボクがアンタと一緒に煌宝へ行く事はない。考えるだけ時間の無駄。思い付いた案も行動も無駄なんだよ」
「……ッ……、」
「さぁ、さっさと退きなよ」
 此処まで言えばもう、今井も何も言えまい。案の定今井は、諦めたのかそこからスッと身体を退けた。