I love you に代わる言葉

 え、と思わず間抜けな声が漏れると同時に、ボクは隣を見た。あまりに予想外の発言で、何言ってるんだろうと思った。だけどおねーさんは至って真面目な顔で、優しい微笑すらも浮かべ、とても冗談や呟いてみただけ、という事ではなさそうだった。ボクは黙ってその横顔を見つめ、次に発せられる言葉を待つ。おねーさんはゆっくりと口を開いた。
「きれいな名前ですね」
 おねーさんはそう言うと、一度天から視線を下ろし、ボクを見た。そして微笑むと、また天を見上げた。
「『日生』を縦に組み合わせると『星』になる。『星の光』……とてもきれいな名前。きれいな響き」
 それを聞いて、高尚な人間の紡ぐ言葉は、何処までも高尚なんだなと思った。綺麗な言葉を紡ぐ事で、その横顔と姿勢がより一層綺麗に輝き、ボクはそれに暫し見惚れていた。けど、ボクの名前はおねーさんが言う程に綺麗なもんじゃない。つと視線を落とし、
「……ボクには、似合わないけどね」
 ボクはそう言った。おねーさんがこちらを見る。
「……自分の名前が嫌いだって言ったのは、そう……思っていたからですか?」
「――そうだよ。ボクには似つかわしくない名だからね。親にも、言われた事あった。元々さ、奴等は男を欲していなかったんだ。なのに男が……ボクが生まれて、その上奴等が理想とする人間に育たないから、せめて奴等は『ヒカリ』のような存在になって欲しかったらしい。けどさ、ボクがいても『闇』にしかならないって嘆いてたよ。まぁボクも汚れた人間だしね、ただ親を憎んで世界を憎んで、それでやっと生を繋げているだけの――」
「日生くん。」
 ボクの言葉を、不意におねーさんは遮った。驚いておねーさんを見ると、泣き出しそうな顔で微笑まれる。おねーさんは、ふるふると首を横に振った。