I love you に代わる言葉

 窓外の景色は、どんどん闇に包まれていく。高速道路から見える街の光がきらきら煌いて綺麗だった。それは何処か煌宝の石達がキラキラ輝く様に似ていて、煌宝に通っていた時、石に囲まれていた自分を思い出した。闇にぽぅっと浮かび上がる光。その美しさに目が釘付けになる。夜景を見るのも初めてだったボクは、己の生きてきた世界があまりに狭過ぎたと、自分がちっぽけであったと、否応無しに痛感させられた。

『石――鉱物というのは、自然、世界の神秘と美しさが凝縮され形となったものだと、私は思います』

 不意に、いつかのおねーさんの言葉が聞こえてきた気がして、思わずパッと隣に視線を向けた。
「?」
 ボクを見て、おねーさんの目が不思議そうに丸くなる。何でもない、と言ってボクはまた窓外へと視線を変えた。
 今なら、おねーさんの言葉の意味が理解出来る。世界の美しさとやらを今実際に目の当たりにして、それが凝縮され形となったものなら、それは当然美しいものだろう、って。
 おねーさんに出会った頃のボクは、おねーさんが自分とは懸け離れた世界で生きていると思い込んでいて、辛酸を嘗めた過去など知らなくて勝手に否定して……相容れぬ思想でありくだらないものと一蹴した。
 世界なんて汚いものばかりで、実際、汚いものばかりだった。――だからこそ、美しいものが見えた。見えるのだと、知った。おねーさんも、同じだったんだ。生きてきた世界は違っても、抱えるものが違っても、それは当たり前というもので、結局人間は皆『人間』なんだ。
 そんな風に考えられるようになった今、環境がどれだけ『人間』の『人格』を作り、そして変えるのかという事を知った。
 ボクはそっと目を閉じ、窓外の景色と同じ色の世界に、そっと身を委ねた。