I love you に代わる言葉

「そうなんですか? それは知りませんでした。日生くんは色んな事を知っていますね」
「知らない事だらけだよ。正直墓参りも今日が初めてだし、やり方も知らないしさ。ていうか、『天使の梯子』の方を知識と入れてるなんて、おねーさんらしいね」
 そう言っておねーさんに視線を向ける。おねーさんは嬉しそうに顔を綻ばせた。本当にキレイなものや美しいものに惹かれる性質なんだろう。こんな女性(ヒト)に会ったのは初めてだ。天使の梯子……か。ボクはもう一度天を見上げ、小さく問う。
「……梯子があったらさ、上りたい?」
 おねーさんがボクを凝視するのが視界の隅に映る。酷く驚いているみたいだった。何に驚いているのか解らないけど、ボクもこんな発想をし、更には口にした自分に少なからず驚いている。つと、おねーさんが視線を逸らすと同時に、今度はボクがおねーさんを見る。
「いいえ」おねーさんはふるふると首を横に振りながら、静かにそう言った。「私はまだ、この世界を生きたい。だから、上る訳にはいきません」
 一切の迷いすら見当たらない強く綺麗なその姿は、スポットライトが当たっているみたいに輝いていた。
 おねーさんの隣で、ケンヤの笑顔が見える気がして、その笑顔に、ボクも薄く笑みを浮かべて応える。
「……そう」
 小さく、ボクはおねーさんに返事をした。この女性(ヒト)はもう、後ろを向かないだろう。この女性(ヒト)が前を向き救われる時、同時にケンヤも、救われるのだろう。
 今、救われたのだろう。