「――あのさ、」
背を向けて歩き出すおねーさんに、声を掛けた。おねーさんは不思議そうな顔で振り返る。
「この墓に、言い残した事があるからさ、おねーさんは墓地の入り口で待っててよ」
ボクがそう言うと、おねーさんはきょとんとして見せた。けど、わかりました、そう言って一人入り口へ向かう。声が聞こえない距離に居る事を確認したボクは、墓を正面に見据え、ハッキリ言った。
「――アンタに、言っておかなくちゃならない事がある。そこで見てるんだろ――ケンヤ。」
ボクは真面目な顔で、ケンヤに向かって言った。言わなければ、ならなかった。
「ボクがおねーさんを幸せにするから、そろそろその手を離して、おねーさんをボクに譲りなよ。アンタが守り抜いたおねーさんを、必ず守ってみせるからさ。けど、ボクはアンタのように死なない。死ぬ訳には――いかない」
そう、強く言い放つ。正面でケンヤがボクの声を聞いている気がした。
悟りの世界でもしもアンタがおねーさんをずっと見てたなら……アンタが死んでからのおねーさんの姿は、見るに耐えなかっただろうね。流し続ける涙を、拭ってやろうにも手はすり抜けて、アンタの名前を何度も呼び、寂しさに悲鳴を上げる心を、安心させてやる事も出来ない。蹲って泣いている背中を、抱き締めたくて仕方無かった筈だ。恋人を一人残して逝った事を悔いて、何度も何度も……アンタだって泣いた筈だ。残されたおねーさんよりも、残したアンタの方が、本当は辛かったのかも知れない。
でももう、安心しなよ。おねーさんが救われる事こそアンタの救いならば――……
ボクは墓に手を伸ばし、そっと触れた。
「アンタにおねーさんを、還らせない。……だからもう、安らかに……」
眠りなよ。
背を向けて歩き出すおねーさんに、声を掛けた。おねーさんは不思議そうな顔で振り返る。
「この墓に、言い残した事があるからさ、おねーさんは墓地の入り口で待っててよ」
ボクがそう言うと、おねーさんはきょとんとして見せた。けど、わかりました、そう言って一人入り口へ向かう。声が聞こえない距離に居る事を確認したボクは、墓を正面に見据え、ハッキリ言った。
「――アンタに、言っておかなくちゃならない事がある。そこで見てるんだろ――ケンヤ。」
ボクは真面目な顔で、ケンヤに向かって言った。言わなければ、ならなかった。
「ボクがおねーさんを幸せにするから、そろそろその手を離して、おねーさんをボクに譲りなよ。アンタが守り抜いたおねーさんを、必ず守ってみせるからさ。けど、ボクはアンタのように死なない。死ぬ訳には――いかない」
そう、強く言い放つ。正面でケンヤがボクの声を聞いている気がした。
悟りの世界でもしもアンタがおねーさんをずっと見てたなら……アンタが死んでからのおねーさんの姿は、見るに耐えなかっただろうね。流し続ける涙を、拭ってやろうにも手はすり抜けて、アンタの名前を何度も呼び、寂しさに悲鳴を上げる心を、安心させてやる事も出来ない。蹲って泣いている背中を、抱き締めたくて仕方無かった筈だ。恋人を一人残して逝った事を悔いて、何度も何度も……アンタだって泣いた筈だ。残されたおねーさんよりも、残したアンタの方が、本当は辛かったのかも知れない。
でももう、安心しなよ。おねーさんが救われる事こそアンタの救いならば――……
ボクは墓に手を伸ばし、そっと触れた。
「アンタにおねーさんを、還らせない。……だからもう、安らかに……」
眠りなよ。

