I love you に代わる言葉

 続けられた言葉はそれだった。
 え、と思わず声が漏れる。決心や覚悟、そういった類の強さみたいなものをその表情に感じたから、何を言われるんだと僅かに緊張が走ったが、予想外の言葉で拍子抜けした。
「ああ……うん」
 短い返事を返せば、おねーさんは何故かふふっと笑う。この時おねーさんが何を考えているのか知りたかったけど、特に何も聞かないでおいた。
「帰りましょうか」
 おねーさんはそう言って、最後にもう一度、ケンヤ(墓)へ振り返った。この微笑が、長きに及んだ艱難辛苦から解放されたのだと伝えているみたいで、何故かボクの方が、泣きそうになった。本当にもう、これで全てが終わるんだろう。
『暑さ寒さも彼岸まで』
 暑さや寒さ、それに伴う様々な苦しみも、彼岸の頃には和らぎ楽になる。そんな意味を持つ語。迷い、悩み、煩悩する人間の心を励ました語とも聞く。ケンヤという男は、おねーさんを守り、そしていつか己の死から救われる事も、悟りの世界から願い続けたんだろう。……いや、ケンヤ自身も、救われたかったのかも知れない。恋人を残した罪をたった独りで背負い闘いながら、いつかおねーさんの笑顔で、己も救われたかったんだろう。