解っている、仕方が無い。気持ちが離れて別れた恋人とは訳が違うんだ。未練がましいとか、そんな男忘れなよ、とか言えるような、そんな単純な話じゃないんだから。この先何度だって、ケンヤという男を思い出し、共にいた日々を反芻し、一生……消えない、褪せない想い出と共に生きるんだろう。
悔しさに、口唇を噛む。が、じりっとおねーさんが足を踏み出した音が聞こえてきて、ゆっくりと顔を上げた。
おねーさんはそっと、自分の傘を差し出し、自分が濡れる事など厭わずケンヤの墓に優しく被せるように置いた。そして、百合の花をそっと手向けると、ボクを振り返る。とても柔らかな表情だった。おねーさんの視線の意味を瞬時に理解したボクは、おねーさんと同じく花を手向ける。おねーさんが置いた花の隣に並べるように。
それが済むとおねーさんは、今度は墓石から二歩離れてしゃがみ込んだ。ボクはおねーさんの右隣に立つと、傘を持つ手を右から左に変えた。おねーさんが濡れないようにそっと左手を突き出せば、おねーさんは驚いた瞳でこちらを見る。それから嬉しそうに笑うおねーさんと目が合って、恥ずかしさにつと視線を逸らせば、ふふっと今度は声を出して笑う。直後におねーさんは、とても穏やかな顔付きでそっと瞼を閉じ、合掌した。それを数秒見つめて、ボクは次に眼前の墓石をじっと眺めた。おねーさんのようにするのが正解なんだろうけど、ボクは心内でケンヤに語り掛けるのが精一杯だった。
悔しさに、口唇を噛む。が、じりっとおねーさんが足を踏み出した音が聞こえてきて、ゆっくりと顔を上げた。
おねーさんはそっと、自分の傘を差し出し、自分が濡れる事など厭わずケンヤの墓に優しく被せるように置いた。そして、百合の花をそっと手向けると、ボクを振り返る。とても柔らかな表情だった。おねーさんの視線の意味を瞬時に理解したボクは、おねーさんと同じく花を手向ける。おねーさんが置いた花の隣に並べるように。
それが済むとおねーさんは、今度は墓石から二歩離れてしゃがみ込んだ。ボクはおねーさんの右隣に立つと、傘を持つ手を右から左に変えた。おねーさんが濡れないようにそっと左手を突き出せば、おねーさんは驚いた瞳でこちらを見る。それから嬉しそうに笑うおねーさんと目が合って、恥ずかしさにつと視線を逸らせば、ふふっと今度は声を出して笑う。直後におねーさんは、とても穏やかな顔付きでそっと瞼を閉じ、合掌した。それを数秒見つめて、ボクは次に眼前の墓石をじっと眺めた。おねーさんのようにするのが正解なんだろうけど、ボクは心内でケンヤに語り掛けるのが精一杯だった。

