I love you に代わる言葉

 店を出て、更にバスに乗る事十五分。バス停から十分程歩いた場所、山麓部分に墓地はあった。墓石は綺麗に並べられていて、縦に三列横五列あった。イメージでしか解らないけど、大きな墓地とは言い難い。が、綺麗で立派な墓石が並んでいる。
 ボク等は最後列の右から二番目の墓に、ゆっくり近付いた。墓石には『黒崎家』と刻まれていた。それを見て、ボクの心臓がどくんと跳ねる。
 これがケンヤという男の墓……ここにヤツが、眠っているのか……
 墓石周辺は既に草抜きもされているし、墓石もきちんと手入れされている、と思う(雨に濡れているからよく解らないけど)。それに、おねーさんの言った通り既に花も飾られている。親族や友人、かつてのバンド仲間が既に此処へ詣でたという事だろう。此処へ来る前におねーさんは、多分私たちのする事は殆どない、と言っていた。それが、こういう事なんだろう。
「……謙也……」
 ぽつり、消え入りそうな小さな小さな呟きが、さぁぁっと静かに降る小雨の中に、響くようにボクには聞こえてきた。差している傘から少し顔を覗かせて隣に立っているおねーさんを盗み見ると、じっと墓を見ていた。恐らく、無意識に出た言葉に違いない。憂う横顔からサッと目を逸らした。


 ――……複雑、だった。